あなた
2011年 03月 18日
悔しいことにあなたのもとへ駆けつけてお手伝いすることはできません。
でも、あなたに想いを馳せることはできます、私にも。
波に飲み込まれて浮き上がるすべもなく命を奪われてしまったあなた。
つないでいたわが子の手が離れどんどん遠ざかっていき見失ってしまったあなた。
水中から浮かび上がった時にたまたまそばにあった畳に乗って助かったあなた。
坂道を必死に駆け上り逃れようとしたあなた、その姿に向かって頑張れ走れと
嗄らす声もむなしく津波にさらわれる様をただ眺めるしかなかったあなた。
3日後に再会し抱き合った母子の声なき声を横で見ながら、消えた夫をさがす
あなた。
後ろにいたはずの老母がいないと気が付いた瞬間のあなた。
必ず会えると信じ歩き続けるあなた。
震災の日に生まれたあなた。
明日のわが子のためにと自分の分のおにぎりを食べずに残すあなた。
避難先で一つ毛布にくるまるあなたとあなた。
安全な状態に戻そうと被曝の恐怖にさらされながら原発で作業するあなた。
妻の行方が分からぬまま市役所で陣頭指揮を執るあなた。
薬品や器材不足で患者が亡くなっていくのを見守るしかない医師のあなた。
被災した小学校で卒業生を送る歌を練習するあなた。
涙より勇気を振り絞ろうとするあなた。
生き抜こうとするあなた。
一人ひとりのあなたが
私の中にいます。